2013年12月21日土曜日

スリップ角3

前回から4ヶ月も経ってしまいましたが,スリップ角に関する続きを詳しく書きます. 前回はスリップ角が
β = θr - θm ...(1)
であること,遠心力に比例すると仮定すれば
acen = k × β ...(2)
と表されることを書きました.

遠心加速度acenは速度vと旋回半径rを使って,
acen = v2/r ...(3)
であるので式(2), (3)から
v2/r = kβ ...(4)
を得ます.

機体の角度θrの時間微分は角速度ωであり, 移動方向の角度θmの時間微分はv/rなので, 式(1)を時間微分すると,
dβ/dt = ω - v/r ...(5)
となります.

式(4)を使って式(5)からrを消去すると,
dβ/dt = -kβ/v + ω ...(6)
を得ます. 定数kを経験的に与える必要はありますが,スリップ角βの微分方程式を得られました. これを積分すれば,スリップ角を推定することができます. 式(1)から実際の移動方向θmを得ることができますので 前々回に示した普通のオドメトリの方法で自己位置推定ができます.

I write the detail of slip angle, though four months elapsed from last time... In the last post, it is explained that slip angle is defined as
β = θr - θm ...(1),
and the following equation can be obtained by assuming a proportional relationship between slip angle and centrifugal force,
acen = k × β ...(2).

Using velocity v and turning radius r, centrifugal acceleration acen becomes
acen = v2/r ...(3).
So, equations (2) and (3) give
v2/r = kβ ...(4).

Here, the temporal differential of the direction of the robot θr is angular velocity ω, and the temporal differential of the direction of actual movement θm is v/r. Therefore, the temporal differential of equation (1) gives
dβ/dt = ω - v/r ...(5).

Using equation (4) to erase r in equation (5),
dβ/dt = -kβ/v + ω ...(6)
can be obtained, which is the differential equation of slip angle β. Although the constant k is required to be determined empirically, slip angle can be estimated by integrating this equation. Since the actual moving direction θm can be obtained by equation (1), general odometry method gives the location of the robot, which is shown in the post before last.

2013年12月8日日曜日

照明環境

ふと思いついたので,メモ.

昨年から全日本大会の照明環境は会場によって大きく異なることとなった.それまでも会場に左右されることはあったが,今年は特に会場が体育館だったこともあり,かなり暗かった.一部のマウスやトレーサを除くと通常暗い方がロボットにとっては有利である.と思っていたが,オートフォーカス用の赤外光を考慮するとむしろ不利かもしれない.

つくばカピオなどの強烈な照明環境下では十分明るいので,フラッシュはほとんど必要ないし,オートフォーカス用の補助光をカメラが発する必要もない.そこで,ロボットは極めて強い定常光のもとで正常動作すればOKであった.しかし,今年のように全体が暗いと,オートフォーカス用の照明があちこちから非定常に照射される.これは禁止されていないので,フレッシュマンといえども対策の必要がある.わりと指向性があって赤外にピークのある光なので実はフラッシュと同じくらい厳しいのではないか.

ハーフマウス決勝ではスタートセンサも誤動作していたようなので,今後ちょっと考慮しておいた方がよさそうである.

2013年12月2日月曜日

クラシックかハーフか

ちょっと思いつきで書きます.話題は,「これからマウスをはじめる人はクラシックマウスかハーフマウスかどちらがよいか?」である.以下の内容はもちろん私見である.しかも思いつきなので議論の詰めは甘い.

結論からいうと,ハーフマウスである.理由は下記のとおり.

  1. 時代の流れがハーフマウスだから
  2. 迷路を準備しやすいから

まず1番.今年の全日本大会でアールティがハーフマウス用の壁柱セットを配っていたこと,来年からハーフマウスにフレッシュマンクラスが新設されることからわかるとおり,今時代はハーフマウスである. (あまり強く主張すると自分の得意な方向へ引き込んでいるようで気が引けるが...)

2番目.迷路を準備するというのは非常に重要.迷路がないと楽しくない上に速くもならない.

一方,反対意見として以下がありうる.

  1. 小さく作る必要があり初心者には難しい
  2. 設計の自由度が下がり多様性がなくなる

1番目はわからなくはないが,マイクロマウスはスタートから出られるようになることさえ難しいというのでよいと思うし,ネット上には情報があふれているので問題ないでしょう.そもそもマウスが難しいからトレースがあるわけで,なんとなく存在する「クラシック → ハーフ」の流れは本来は「トレース → マウス」ではないのかと思う.

2番目も否定はできない.ハードウェアの多様性は多少下がるかもしれないが,それでもハーフマウスにもそれぞれ個性があるし,何より作るのが難しい分ハードウェアに製作者の苦労が見えるのが面白い.加えてソフトウェアの方は,32x32と迷路が巨大なおかげでそれぞれの探索や最短経路の計算方法の違いが見えてくる.クラシックではなかなかソフトウェアの個性が見えない.

もちろんそれぞれが面白いと思う方をやればいいと思います.言うまでもなく楽しめるかどうかが一番重要です.